サウスパーク愛

某アップローダーに「サウスパーク-日本未放送-」と書かれたファイルが上がっていたのを目にしたのが、2003年12月25日。タイトルには『chinpokomon』と書かれていた。「サウスパーク」というタイトルは以前から知っていたけれど、絵柄が好みでなく”食わず嫌い”的な態度を取っていた。でも「タダより安いものはない」と誰かがささやいたのかは分からないけれど、とりあえず落としてみる事にした。早速見てみたものの、さすがに英語なのでほとんど分からない。スクリプトを同梱していてくれたので自分で訳し始める事にした。
生きた会話なので辞書に載っていない言葉もたくさんある。それでもなんとか映像だけでだいたいは知る事ができた。しかし翻訳は何度かチャレンジしたものの、全文のおよそ半分にも満たない程度で止まってしまっていた。
そしてしばらく経ち、ケーブルのチャンネルAXNで偶然にも吹き替えバージョンで放送されているのを目にした。とりあえず見てみる。第一印象はよく分からないけど「面白いかも?」というものだった。しかもものすごい早口で何を喋ってるのか聞き取れない箇所がある…自分はあまり耳がいい方でない為に録画して見ることにした。そして2回目かトゥースフェアリー(乳歯が抜けた時に枕の下にそれを入れて一晩眠るとお祝い?におこずかいをくれると伝えられる歯の妖精)のエピソードを見て、リピートを繰り返すほどにハマった。
主人公は8歳児の男子4人。学校を全焼させてしまったり、エチオピアの飢餓に苦しむ人々を遥か遠くの星に移住させてしまったりするパワフルな子供たちだけど、周りの大人も負けていない。誰一人としてまともな人が存在しないサウスパーク。そんな中で主人公の子供達が色々な事件を元に一つずつ学び大人になっていくという目的が物語の根幹にある。
話には性的な言葉も人種差別も包み隠さず出てくる。政治家だってハリウッドセレブだって特別扱いしない。むしろ登場したが最後、下品にデフォルメしまくる。裁判起こされたら絶対に負けるだろ、という程に冒涜する。しかし今ではシーズン8を越える超大人気作品となっているのだ。
それを許せてしまうのはアメリカののんきなお国柄なのか、ただ相手にされていないだけなのか。自分だったら顔真っ赤にしてプルプル震えながら怒りをこらえるのに必死になってしまうと思う。しかし数回見るうちにハマってしまう。それは何故だろうか。
その謎を紐解く鍵の一つに「常識」というのがある。数々のエピソードでゆがんだ常識を取り上げ、それを面白おかしく揶揄する。こてんぱんに叩きのめして町中をひっくるめたとんでもない騒動になってしまうが、子供達はそれによって大事な事を学ぶというパターンの中で、「常識」を正義に敵対する「差別や過保護」である悪者を退治するという勧善懲悪なつくりになっているから、視聴者はスッキリとした気持ちで『あー今回も面白かった』とほっと一息つけるのだと思う。といっても賛辞だけで終わらず、「やっぱりアホだ」という脱力感もプラスしてくれる。
ごくごくまれに作者のいたずら心からか投げっぱなしで終わったり、物凄いいやなオチで終わってしまうものもある(笑)。
しかしその話の中で色々なお約束などを取り付けつつ、エロやグロなどの下ネタ、社会風刺などで肉付けをしていきサウスパークは出来上がる。シーズン中はなんと週一で放送される。そして放送当日の昼前にその日に放送するエピソードが出来上がるというギリギリっぷり。
監督はなんとも気の良さそうな地味なおっさん二人。(立っている方がマット・ストーン。彼の髪はおそらく地毛。座っている方がトレイ・パーカー。トトロが好きらしい)欧米ではスノッブでお洒落だとされる『オタク』でジャパニメーションや映画などに精通している。そして登場人物の声のほとんどを二人でアテレコしている。そして劇中の歌も自分達で作曲し、歌ってしまう。映画版ではオリジナル歌曲賞としてアカデミーのノミニーにもなった。マルチな才能あふれる二人組である。(国内版DVDのシーズン1、2には二人のエピソード解説ミニコントも収録されている。これがかなりのブラックで3以降に収録されていないのが惜しい。)
監督としてサウスパーク内で二人は視聴者に疑問を投げかけるけれど、観念を押し付けたりしない。何を持って自分の正義とするか、視聴者へと判断は委ねられる。まあ「でも…これでもあなたはまだ気付きませんか?」といったような意思表示は見られるとしても。
そんな一方でまたバーブラ・ストライザンド(アメリカ版松田聖子?)やジェニファー・ロペスを酷いキャラに仕立て上げ、めったやたらに落とし込みしてしまう一面も(笑)。実際のキャラが分からないのでどうとも言えないが、案外と実像に忠実なのかもしれない。そうでなければマジにただの毛嫌いか。

右端の少年は主人公のひとり、スタン。
真ん中はその父親ランディ。シーズン8より。低賃金でよく働く未来人が現代にやってきて、そのために労働者の人々は職を奪われ社会問題にまで発展。それに抗議する為、子孫を残さないように「同性間でしか性行為をしない」というデモを行っている際にインタビューを受けるシーン。優しいがいったん本気になると回りも見えなくなってしまう単純で熱血漢な父親だ。|
現在日本では第7シーズンがWOWOWで放送中だが、昨年クリスマスまでは本国で第8シーズンが放送されていた。芸能人ネタが沢山出てきており、CGのグレードも上がっていて綺麗だ。
やはり英語の方が歌はテンポがいいし面白い。ジミーという身体障害を持つキャラが居るのだけど、その子は特に英語Ver.の方がいい。マッケイ先生(右画像)も。吹き替えも良いのだけど滑舌が良すぎる。情報量が多くていいのだけれど、やりすぎると野暮になってしまって、せっかくの面白いシーンも白けてしまうというデメリットも存在する。
シーズン8は特に歌が多いので、それが日本での評価の明暗を分ける事になるかもしれない。しかしシーズン8が面白い事に変わりはないので、他の人にも早く見て欲しいと思う。